進行性核上性麻痺(PSP)を疑う時

レビー小体型認知症は、画像所見などよりも症状が特徴的で診断の役に立つので、理解力のある家族は
「先生はアルツハイマーとか言っているけれど、うちのお父さんはレビーじゃない?」
と気づくことが珍しくありません。
 そして実は、進行性核上性麻痺(PSP)という神経難病も、同じように‘家族が気づきやすい病気’なのでは…と最近思い始めました。比較的珍しいと思われていて聞き慣れないので、病気そのものの概念を知らないだけで。

 

●PSP(進行性核上性麻痺)とは
障害部位)中脳・大脳基底核から前頭葉・側頭葉・脳幹へ
 中脳は様々な神経伝達物質が集まるターミナル駅に例えられます。

 

 パーキンソン病のように動作がゆっくりで筋肉が緊張している症状があるにも関わらず、抗パーキンソン薬で効果が改善しない…という経過があれば、下のような症状がないか確認をしてみて下さい。

 

●症状の特徴

・認知機能低下
 思考遅延(考えるスピードが遅くなる)
 医学生時代の神経内科の先生には「無鉄砲になる」と教わりました。

 

・体幹部が硬くなる
首も含んだ体幹部(体の中心)が棒のように硬くなり後ろに転倒する。
 身体所見では上下の眼球運動が障害され、歩いていても下を見ることができません。家族に聞くと「下が見えていないみたいです。」と教えてくれることも。

 

 前頭葉症状で思慮深さがなくなる(無鉄砲になる)ところに、足元がよく見えない、体が硬くてバランスを取りにくいのですから、転倒3重苦です。結果的にしょちゅうしょっちゅう転んでいることになります。(この1週間で2回転びました、というレベル)バタン!と激しく転ぶことをくり返すので、診察室に入ってきた時に顔や頭に大きな内出血の跡が見られたり、頭部を保護するニット帽などをかぶらせてニコニコしていた場合にPSPかな?と疑います。(多幸的というのもPSPを疑う要素の一つ)
どういう時にPSPを疑う?

 

どういう時にPSPを疑う?
『内出血とニット帽でPSPを疑え』

 

(パーキンソン病では四肢の筋肉の緊張が先行するのと注意深く動くので、PSPのように激しい転倒することはあまりありません。)
他には嚥下障害も見られ、誤嚥性肺炎に注意が必要です。

 

 いずれの症状も、「進行が速い」ことが特徴です。
進行は月単位で、認知症?と思って、受診しようか…と思っている間によく転ぶようになり、途中から食事や水をむせるようになる。それだけでPSPらしい経過と考えた方がいいかもしれません。

 

 画像診断なしでPSPとCBSを厳密に区別することは、難しいです。でも1番大切な「薬の副作用で本人の状態を悪くしない」という目的からすれば、両者は厳密に区別する必要がないとも考えられます。「だいたいこの辺りの病気」という認識で、現場では困らないように思うのですが。