アルツハイマー型の見抜き方

 認知症=アルツハイマー型と思っている人も多いくらい、有名なタイプです。実は医師のなかでもそう認識している方が多く、他のタイプが平気でアルツハイマーと診断(誤診)されていることも多いのが実態です。

 

 まずは典型例をご紹介しましょう。私の一般外来に来られた78歳の女性です。

 

「近藤さん、今日はどうされましたか?」

「こんにちは。血圧の薬がなくなったから来たんですよ。この間来た時は、白土先生の外来がお休みだったから。」

「あ、先日来られた時は、私が外来に出ていない曜日だったんですね。ところで、つい10日前に、お薬が1ヶ月分出ているんですが、もう薬がなくなっちゃんですか?」

「きちんと毎日飲んでいるんですけどね〜。他のところにしまって忘れちゃったのかしら。家に帰ってもう1回探してみようかしら。」

「ところで近藤さん、今日って何月何日でしたっけ?」

「え〜と…(カレンダーをチラっと見て)6月…何日だったかしら。最近は曜日と関係ない生活しているから。」

 

どうでしょうか。実はこの会話、アルツハイマーらしさ満載です。

 

アルツハイマー型の見抜き方

 

 アルツハイマー型の方の大きな特徴は、「普通に見える」です。身なりもきちんとされて礼儀も保たれていて、ちょっと話しただけでは全く違和感がありません。河野先生は「どこにでもいる隣人」と表現されています。
 しかし、会話するうちに、あれ?という点がいくつも出てきます。アルツハイマーは脳内のアセチルコリンという物質が減る‘もの忘れの病気’ですから。日にちや曜日がわからなくなって、主治医が外来に出ていない日に外来に来てしまい、さも私が突然の休診だったかのような言い方をしてくれます(笑)先日薬をもらったばかりだと言うのに、すっかり忘れてもう1度受診します。それを指摘されると、どこかに置き忘れちゃったのかしら〜と上手にごまかす。これは取り繕いと言って、アルツハイマー型によく見られる行為です。カレンダーのチラ見なんかもそうですね。私も今日が何日かわからなくなることはよくありますが、さすがに今が何月かがわからないとなると認知症の疑いが濃厚です。私が以前訪問していた80歳のアルツハイマーの女性は、そつなく和やかに会話をし、いざ帰る時に「寒いので気をつけて。」と心遣いの一言を添えて下さいましたが、それは8月のことでした。

 

 これ以外にも、アルツハイマー型では頭頂葉という部分の萎縮が目立つことが多いのですが、ここは空間認知をつかさどっているため、慣れた道で迷ってしまったり、時計の絵を描いてもらうとあっと驚くような絵を描くことがあります。

 

アルツハイマー型の見抜き方

 

当院でアルツハイマー型と診断した方の絵(10時10分の針が描けない)

 

 アルツハイマーの方は初期は普通に会話もできて違和感がないことが多いので、一緒に生活していない息子さん娘さんやご近所の方は、変化に気がつかないこともよくあります。同居しているお嫁さんの行動を、あんなことをされたの、こんなことも…と子供や近所の方に愚痴って周囲がそれを真に受けていたら、実は被害妄想だった、ということも起こり得ます。
 しかし上の会話のように注意深く話を聞いていると話の整合性などからあれ?と疑うヒントは隠されているので、‘しっかりしているように見える’という外見に騙されず、愛情に裏づかれた疑いの目を持って見守りましょう。

 

*遠方に住むお子さんが帰省した時にそっと確認すべきポイント

・冷蔵庫や食材庫 
醤油やマヨネーズなど、すぐには使い切らない食材を5個も10個も買い込んでいないか。
・押し入れ
 紛失して再発行した診察券が何枚も出てきたリ、思いもかけない所から思いもかけない物が出てきた場合には、要注意。(大事にしまって、しまった場所を忘れてしまうことがあります)
 また数時間一緒に過ごしただけでは気にならなかったが、旅行などで数日一緒にいたら「あれ?!」と驚くことが色々あったという声も聞きます。

 

アルツハイマー型の見抜き方

 

「え〜!」と驚くような物を見つけて内心動揺しても、焦ってその場でご本人に詰め寄ったり受診を強く迫らない方が賢明かもしれません。‘取り繕い’というのは、ある意味では自尊心を保つため、自分を守るために無意識に行っている行為ですから、ご本人のプライドを傷つけることであなたとの関係がぎくしゃくする可能性があります。私の外来でも、よく女性の認知症患者さんが「自分のことは自分で出来ているのに、息子がボケ扱いして!」と怒っている方がいます。受診を促すにしても、どんな言い方で誰から持ちかけるとうまくいきやすいか、冷静に作戦を立てて進めましょう。