診断はざっくりとでよい

 

 大切な家族が、どうも認知症ではないか。そう疑った時、あなたは、どうしますか?できる限りのことをしてあげたいと思いますよね。大学病院のような大きな病院で、専門科の先生に、徹底的に検査をしてもらえば、よりよい治療を受けられる。インテリジェンスが高いご家族ほど、そんな風に思う傾向があります。

 

診断はざっくりとでよい

 

 でも実は認知症において、最初から「専門的な検査」が必要なケースって、それほど多くはないのが実情です。きちんとした知識を持っている先生なら、まずは開業医の所で治療を開始して大丈夫です。
 そうは言っても診療を始めて間もないうちに、1回は頭部CTを撮っておいた方がいいと思います。なぜかと言うとごく一部に、頭のCTを撮らないとわからないタイプの認知症が隠れているから。正常圧水頭症や、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫など。当院もそうですが、開業医の所にCTがないのが普通です。そういう時は、近くのCTを持っている総合病院に紹介してもらって、CTだけそちらでお願いすればいいのです。
CTがあるからという理由だけで大きい所に通院しつづけなくてはいけない、ということではないんです

 

診断はざっくりとでよい

 

1つ目)『SPECTは、混合型の認知症では意味がない』

 SPECTという検査もあるじゃないか…と思われるかもしれません。確かにSPECTという検査をすると、血流が低下している部分がわかります。
 しかしSPECTは、混合型の認知症となると意味がないのです。混合型というのは、たとえばアルツハイマー型と脳血管型など、2つ以上のタイプが一つの脳の中に混在している場合。純粋に1つのタイプで説明できない状況のことです。血流は周囲との比較で判断するので、混合型でAとBの両方の領域の血流が共に低下している場合には、意味をなしません。混合型はかなり多く、80歳以上の高齢者であれば混合型が主流と言っていいかもしれません。
ちなみにSPECTは、とても高額な検査です。CT・MRIが1-3万円であるのに対し、SPECTは8-10万円かかります。

 

2つ目)『認知症のタイプは移行していく』

 多くの方が、一度しっかり調べて認知症のタイプが確定したら、病名は一生そのままだと思っています。でも実は違うんです。アルツハイマー型だと思っていたら数年後に幻視症状が出てレビー化したり、レビー小体型だった方が途中ですごく怒りっぽくなってピック化したり。認知症というのは、経過の中で姿を変えていくことがしばしばあります。また世界トップレベルの認知症でも、亡くなった後の病理の結果と生前の診断を比べると、10数%の誤診であったと報告されています。つまり、『現時点でのタイプを調べることに固執することにあまり意味がない』ということが言いたいのです。

 

3つ目)診断がつかなくても治療はできる

 実は、診断名が厳密にわからなくても治療は開始できるのです。認知症で使われる中核症状改善薬(記憶の薬)、抑制薬(エネルギーを抑えて穏やかにする薬)は、どれも病名ごとに分かれている訳ではなく、共通して使うことがほとんどだからです。
ご家族は「病名もわからないなんて不安…。」と心配しなくてよいのです。

 

診断はざっくりとでよい

 

 もちろんタイプを推測することで、そのタイプ特有の症状が理解しやすかったり、その先に起こりうることを予測して気をつけて見守ったりという配慮がしやすくなるというメリットはあります。
 ただ一番大切なのは、検査結果ではなく目の前の症状。つまり記憶力や判断力はどのくらいなのかという中核症状と、どういう行動で生活の中で困っているのかという周辺心理症状。ここに焦点を合わせた治療を行っていきましょう。

 

 本人がよい状態に改善するかは、沢山の検査をしたかどうかとは全く別の問題です。ぜひきちんと良くしてくれる先生の所にかかって下さい。