長谷川式でタイプ診断

 長谷川式認知症スケールというのは、短期記憶を見る代表的な検査ですが、非常に多くの情報をもたらしてくれます。30点満点中20点というのがカットオフポイント(認知症かそうでないかの目安の数値)ですが、数値だけを見て〇とか×と判断するのは、大間違いです。
この検査をしながら、答える方の態度も実はタイプ診断の参考になるのです。
代表的なタイプ別に、あるあるな行動パターンを見ていきましょう。

 

アルツハイマー型) あっけらかん&取り繕い

 質問に答えられなくても、あっけらかんと明るい雰囲気。
「100ひく7は?」「107!」という感じで適当に答えたりします。そのため長谷川式がサクサク進みます(笑)

 

長谷川式でタイプ診断

 

 もう一つのパターンは、取り繕い型。言葉はなめらかで会話のキャッチボールがよくできる(疎通性がよい、と言います)方が多いので、うまく答えられない理由を、上手にごまかそうとするのです。簡単な計算ができないのは「最近あんまり買い物しないから…」
今日の日付がわからないのは「もう仕事していないしね…」先日時計の絵を描いてもらってきちんと書けなかった女性の言い訳は「最近は腕時計をつけていないから。」でした。
 蛇足ですが、これって人間として当然の自衛本能ですよね。さほど難しくもない漢字が書けない時に「パソコンばっかり使ってるから、漢字書けなくなっちゃって…」と言い訳をしているサラリーマン、いっぱいいますよね(笑)私もよくやります。自分の弱さを一生懸命隠そうとしている人に「腕時計つけてなくたって時計の絵は描けるでしょ!」なんて言って追いつめてはいけません。「緊張しているから、余計に思い出せないんだよね。」とフォローしましょう。

 

レビー小体型) 寝てしまう&日によって点数が違う

 レビー小体型は「意識障害型認知症」と呼ばれるように、昼も夜も眠くなるタイプの認知症です。そのため、常に頭の中にもやがかかったようで、テストでよい点数がとれないことが往々にしてあります。あなたが徹夜あけでテストを受けさせられているようなものです。ですからレビーの方については傾眠がちで点数が低くても、記憶力が低下しているとは断言できません。一度シチコリン注射などの薬剤を使ってすっきりと目を覚ましてからテストを受けると、驚くほど点数が高くなることもあります。

 

長谷川式でタイプ診断

 

ピック病) 怒ってしまう&出て行ってしまう

 理性の座である前頭葉が障害されるピック病の方は、そもそも長谷川式を行うことができないこともあります。怒って診察室に入って来てくれないなど。また、最初は質問に答えてくれていても、次第に機嫌が悪くなり「だいたい俺がなんでこんな質問に答えなきゃいけないんだ!もういい!!」と立ち上がって部屋を出て行ってしまうこともあるのがこのタイプ。検査ができなくて困った…とも言えますが、実はこの行動パターンこそが「ピック病らしい」として診断の役に立つ側面もあります。そのような場合には、主治医意見書のコメントを書く欄に「長谷川式は、怒り出してしまい中断。易怒が強いためピック病を疑う。」と記載します。

 

長谷川式でタイプ診断

意味性認知症)おうむ返し&点数が一桁

もう一つの前頭側頭型変性症である意味性認知症は、側頭葉がやられるタイプの認知症です。このタイプの特徴は、語義失語。言われている言葉の意味を理解するのが難しいのです。長谷川式は、すべての質問を言葉で行いますから、意味性認知症の方にとってはとてもハードルが高い検査。患者さんは、質問の回答がわからないという以前に「聞かれている質問の意味が理解できていない」のかもしれません。
「野菜を10個言ってみて下さい。」「野菜…?」というように、こちらがいま言ったことをそのまんま反復した場合に疑います。これを「おうむ返し」と言います。5つの物品を隠して何があったか問う質問ですが、このタイプの方は、物品を並べた時点で戸惑うような表情をされます。声に出して覚えようとする方がいらっしゃいますが、そもそも目の前の物を「はさみ」と言えず「切るやつ」と表現したりするのです。
 日常生活はそれなりに回せているにも関わらず、長谷川式は7点以下とかなり低めに出てしまった。そんな時には失語が影響しているかもしれないと判断します。
長谷川式でタイプ診断

 

脳血管型認知症)長考&謝る

 脳梗塞や出血の後遺症で認知機能が落ちてしまった方の場合、まだら痴呆などと呼ばれるように、弱くなってしまった部分と、しっかり保たれている部分が混在します。そのため、「こんな風に色々なことが出来なくなってしまった自分」を客観的に認識することで、落ち込んでしまうことがうつ状態の原因となったりすると言われています。このタイプの方は長谷川式においては、とにかく長〜く考えて考えて、考える。あきらめて次の質問にいこうかと思うと突然回答して驚いたりします。検査にも時間がかかる。(河野先生は脳血管型の患者さんが増えると、外来がパンクするとおっしゃっています笑)また答えられないことに対して、「もうすっかりダメになりましたね。」などと現状を嘆いたりするようなコメントを添えたり、答えられないことを申し訳なさそうに謝ったりすることも。沈んだ感情に対してもしっかりサポートする体制が必要だと考えます。