脳血管型認知症

 

 脳血管型認知症は、脳梗塞や脳出血という血管イベント(つまったり破れたり)の後遺症として脳の働きが落ちてしまうタイプです。定義としては、イベントが起きてから半年以内の発症とされています。

 

 師匠の河野先生は、脳血管型認知症を「神経連絡不全型」と評しています。梗塞や出血で脳がダメージを受けることで、情報の伝達に時間がかかり、結果として「長考」となります。

 

いつも外来でお話しする脳梗塞後のSさんとの会話。
「〇〇さん、今日は体調はいかがですか?」

「…………。………。………。だいぶ…いいです。」

文章化すると何ていうことはないですが、診察室では、長〜〜い間が訪れます。

 

長谷川式で野菜10個を言ってもらうにしても、待って待って待って、普通だったらもう出ないよね、次に行こうかというタイミングでボソッと「かぼちゃ。」とか出てくるので、どこで打ち切ってよいのか迷います。

 

 失礼ながら、長いこと使っていた古いパソコンを思い出してしまいます。すぐに反応しないからあれ?と何度も何度も連打していたら、忘れた頃にバーーーーと文字が出てくると言う(笑)神経連絡不全、言いえて妙ですね。

 

脳血管型認知症

 

 せっかちな性格の私は、慣れるまで少し大変でしたが、これがSさんのペース。沈黙の何十秒の間も、Sさんなりに脳をフル稼働しているのだと思えば、途中で打ち切ってはいけません。その日の体調によって、ひっぱってひっぱって出てくる日と、今日はすんなり言葉が出るな〜という日とがあるのが面白いところ。気候によって脳血流が影響を受けるのかな…と推測はしているのですが。
純粋な脳血管型というのは少なくて、圧倒的に多いのはアルツハイマー型との合併だと思います。

 

 このタイプは‘まだら痴呆’などという表現をされるように、昔ながらのしゃんとしている所と、あれ?と驚くほど落ちてしまっているところがあります。落ちてしまっている部分は、損傷を受けた部位がつかさどっている機能なので、症状は部位や程度によって千差万別。
しゃんとしている本来の自分が「こんな風に色々出来なくなってしまった自分」を冷静にわかっていて、だからこそ自分に落胆したり悲観したりして気持ちが落ち込んでしまうことがあります。その辛さは本人にしか分からないでしょうが、少しでもそのつらさを減らせるお手伝いをしたいものです。