治療記事一覧

運転免許の書類提出のために初めて来院した70歳台半ばの男性。妻いわく、最近それなりにもの忘れをするとのことです。自分でも「言葉が出てきそうで出てこない…」という自覚あり。大事なポイント)・令和になったばかりだというのに、元号が答えられません。・野菜を10個言う設問で「大根」を3回ほど繰り返して言ったり(直前のことを忘れている)、野菜を言っている途中に「さくら」と言ったり(記憶が混在している状態で、...

  認知症の症状がよくなった悪くなった、そんな風に十把一からげにされがちですが、穏やかな生活を送るためには、認知症症状を整理して考えることが大切です。 まずは、現在の症状を2つの軸から考えます。記憶力や判断力といった中核症状はどうか。(中核症状の軸)エネルギーが高すぎたり低すぎたりしないか。(エネルギーの軸) 認知症なんだから、記憶力や判断力は落ちているに決まっている!というのは実は誤りです。ピッ...

 著効例というのは、Before→Afterという形でよくなった瞬間を切り取って示されることが多いです。しかし実際には、めでたしめでたしで終わらないのが現実の外来。よくなったと喜んだら翌々月くらいにはちょっと不穏な雰囲気になり、慌てて内服を調整。日々これの繰り返しです。これを‘サーフィンアレンジ’と読んだりします。一つ波を乗り越えたと思ったら、また次の波が…と一つ一つ波を華麗に超えていくイメージで...

今日は60歳台後半の男性のお話です。元々糖尿病で内科に通院していた方ですが、平成22年頃から物忘れ、怒りっぽさが出現し、23年夏に行った長谷川式認知症スケールでは13点(30点満点)と大きく低下していました。当時コウノメソッドを知らなかった私は、当然のように ‘認知症の精査加療のため’ 総合病院の某専門科に紹介したのです。結果はアルツハイマー型認知症の診断。平成24年春に奥さんに「今も通院して治療...

 認知症の4タイプの中でも、もっとも相談相手を間違えてはいけないのが、レビー小体型です。なぜかと言うと…レビー小体型には‘薬剤過敏性’があるからです。 レビーの方はこの薬剤過敏性により、その特徴を十分に生かした丁寧な薬の調節を行えば、驚くほど状態が改善することがあります。一方で、薬剤過敏性を無視した大雑把な処方をされると、短期間の間に急速に歩けなくなったり、肺炎をくり返すようになるなど、急激に悪化...

 レビー小体型認知症は、別名「意識障害型認知症」とも言われ、傾眠が特徴の一つです。認知症の方の中には昼夜逆転して昼間眠い方もいますが、レビーの方は昼も夜も眠いのです。 診察室でも、車いすの上でウツラウツラ寝ていて、話しかけると「はい…」と何とかお返事をするのですが、家族の方と話している間にまた涎をツーっと垂らしながら寝てしまう姿が典型的です。介護職に携わっている方なら、そういう方数人がパッと頭に浮...

 これを知らずに抑制薬を使うのは危険です! 70歳前半の男性が2人います。どちらも1年前に「激しく怒る」という症状で認知症を発症し、薬を飲み始めました。2人とも自分の足で歩き、一人で食事が出来ました。 1年後の今、2人はどうなっているでしょうか。Aさんは、今も変わらず自宅での生活を続けています。1年前と比べて、だいぶ穏やかになっていました。妻は当時を振り返り、「あの時と比べれば、天国と地獄くらい違...

家庭天秤法とは)薬の副作用を最小限にしながら本人が穏やかに過ごせるよう、家族や施設スタッフが抑制薬(脳のエネルギーを抑えて穏やかになることを期待する薬)を増減する方法。どんな時に薬を増やすか?怒ったり大声を出している時。暴力を振るう時。ソワソワと落ち着かない時。幻視(実際にはない人や物が見える)や妄想が強い時。どんな時に薬を減らすか?薬が必要以上に効き過ぎている(過沈静)状態にある時。 昼間からウ...

 認知症爆発時代を迎える今、かかりつけの開業医が認知症診療を行うことが患者さんにとってベストであることは間違いありません。ただ現実には、認知症診療に対して苦手意識がある先生が多いのが実情です。かかりつけ医認知症講習を多くの医師が受講しているはずなのに、結局は絵にかいた餅となってしまっていて、非常に残念です。開業医の先生がこれさえ出来れば、多くの患者さんと介護家族が救われるのに…と思うのは、下記の2...

 私が担当しているレビー小体型認知症の患者さんで、アリセプトという中核症状改善の薬を3mgから5mgに増量したところ、しばらくして歩行が悪くなって転倒をくり返すようになった方がいました。その後主治医の判断で5mgから8mgに増量されたところ、今度は食事が摂れなくなってしまいました。 幸い家族が本人の様子をよく観察していて、薬を増やしてからこういう変化が起こったため薬を減らしてほしいと主治医に訴えま...

「うちの夫は怒り方が激しくて激しくて…。とてもじゃないけど受診なんかできません。」 そう言われたら、もうそれだけで…おそらくピック病かな、とあたりがつきます。「行かなくていいよ〜。」と軽く渋るとか、少々不機嫌になるくらいであれば他のタイプのこともありますが、火がついたように怒るとか、待合室まで来たのに怒って診察室に入ってくれないとなると更にピック病らしさは増します。 ピック病は、前頭側頭型変性症の...

 現在の日本では、4種類の‘中核症状改善薬’が保険適応になっています。最初はアリセプトという1種類しかありませんでした。2011年になって他の3種類が相次いで登場しました。    認知症診療においては、高確率にこれらの薬が処方されるようになりました。4種類もの選択肢があって、認知症患者さんの状態が劇的によくなったかと言うと…残念ながら、そんなことはないようです。薬の副作用によって、かえって状態が悪...

 アルツハイマー型、レビー小体型、ピック病(前頭側頭型)、脳血管型の4タイプがあるということを説明してきました。今回はいよいよ大切な治療についてです。 詳しい薬の説明などはここではしませんが、最も大切な考え方についてお話しようと思います。認知症診療において、大切なこと。それは‘順番’です。 これを理解するには、認知症症状について頭の中を整理することが必要です。認知症の症状は、大きく分けて3つのグル...

 抑制薬というのは、怒りっぽかったり暴力をふるってしまう認知症の患者さんに対して処方される抗精神病薬のことです。抑制薬について考える時、最後にたどり着く言葉は、この一言。「背に腹は代えられない」 抗精神病薬というのは、特に高齢者では、頭がボーっとしたり足元がふらついたりして転倒のリスクを増すと言われています。それは事実です。だからと言って認知症患者さんのBPSD(行動心理症状 認知症に伴い介護の負...

 服薬支援ロボという機械を、ご存知でしょうか?薬を飲み忘れてしまったり、逆に飲んだことを忘れてもう一度飲んでしまう…という高齢者(特に認知症の方)のお薬問題を解決することが期待できる機械です。機械の要点は、こんな感じ。・1週間分の薬をカセットに詰め、そのカセットを機械にセットすると、指定した時間に音声でお知らせしてくれる。ボタンを押すだけで飲むべき薬が出てくる。・飲んだことを忘れてもう一度ボタンを...

 泌尿器科医であるアクアメディカルクリニックの石黒伸先生から、「夜間頻尿を和らげるちょっとしたコツ」を教えて頂きました。1)中高年で自立している方であれば、男女関係なく16?17時に入浴する。つまり就寝時間4-5時間前シャワー浴ではなく、15分くらい浴槽に浸かる。2)夕方以降は床に座るか、イスに座るなら膝がまっすぐになるくらい下腿(膝から下)を挙上させた姿勢を取る3)16時くらいに、ラシックス5-...

 認知症診療でよく使う抑制薬の全体像をざっくりと俯瞰できるように書いてみました。●グラマリール(チアプリド)「迷ったらグラマリール!」無難な選択。・初回診察後でまだタイプがはっきりしない時・多少イライラが目立つが、暴力的というほどでもない。・脳血管型認知症の怒りっぽさ・妄想に対して●ウィンタミン=コントミン マジカルパウダー!  ・易怒が強くて手をあげるなど、エネルギーが強い時・錠剤を警戒して飲ん...

認知症の症状で大声で怒鳴っている男性の奥さんに「お薬を使いましょうか?」と確認したところ、奥さんはこんな風に答えました。「いいんです。薬で静かにするなんて可哀想ですから…。もう少し頑張ります。」毎日昼も夜もなく大声で呼ばれ、時には手が出ることさえあると言うのに、です。旦那さんへの愛情を感じると共に、世間の抑制薬へのイメージはそういうものなんだな…と実感しました。おそらく奥さんの頭の中には、抑制薬を...

 私の前勤務先である笠間市立病院では、20床の病床を持っていました。 入院するという事実を、認知症診療においてどのように強みにできるか? これは当時の私にとって重要課題の一つでした。メリットは、昼夜症状を見守りこまめな薬剤調整が出来ること、陽性症状で疲弊しきったご家族にほんの少し休んで頂けること。デメリットは言うまでもなく「環境がガラリと変わること」です。 慣れ親しんだ自宅から離れること事態が、患...

 95歳女性。当院初診の2ヶ月前に他院でレビー小体型認知症と診断され、リバスタッチパッチ4.5mgを開始されたばかりの方です。今朝から全く水分を摂ろうとしないとのことで家族が点滴を希望して連れてきました。考えたこと)・急性感染症(たとえば肺炎)などの体調変化が起きている。  血液検査で確認・リバスタッチパッチ 4.5mgが高齢のこの方には多すぎた。・レビー小体型に特徴的な、意識障害である。「Hさん...

 90歳台後半の女性との、素敵な出会いがありました。 この方は、受診一年前の秋から、連日のように「頭が痛い」「死にたい」「物を投げつけたい」「自分が誰だかわからない」「吐き気がする」と訴え、毎日のように深夜3時頃に家族を起こしていたようです。近隣のかかりつけ医を受診するもらちが明かず、大学病院を2回受診(教授の診察)するも異常なしと言われ解決せず。12月には転倒して骨折するなど、心身ともに一気に状...

(Case)63歳男性 独身で一人暮らしの方で、60歳に定年退職。次の職を探すもなかなか次の仕事が見つからなかったようです。弟さんが助けになろうとパソコン手技を教えるも、覚えることに手間取ってあれ?と感じていたようです。この1年で急速にもの忘れ症状が進み、つい先日からケアハウスに入居することになりました。2週間前からは易怒(怒りっぽさ)も出ていると言います。 診察時には、ソワソワととにかく落ち着か...

 認知症=中核症状改善薬を使うことではありません。こう思い込んでしまうと、現場での悲劇がスタートします。中核症状改善薬には、多かれ少なかれ興奮性があります。怒りっぽかったり時に手を挙げるような強い陽性症状がある場合には、中核薬の開始ではなく、抑制薬によって穏やかにすることを最優先にしましょう。 ある程度穏やかになって初めて「どの中核薬を選択するか」を考えます。ここではざっくりと4種類の薬の特徴を書...

 コウノメソッドでは、中核症状改善薬(=中核薬 いわゆる認知症の薬)の使い方のルールを、こんな風に表現しています。 1番少ない用量から始めて、少しでも改善効果が見られたら、無理してそれ以上増量せず、そのままの用量で維持する、という考え方です。また1番下の用量でも副作用が出た場合は、さらに減量したり中止を検討するなど、きめ細やかな対応を求めています。 例えば小児科では、薬を体重1kgあたり〇mgと計...

 レビー小体型の治療をする上で、もっとも意識しなくてはいけないこと。それは…薬剤過敏性です! レビー小体型の方がドネペジル(中核症状改善薬)を標準量である5mgを内服して数ヶ月後に、歩行が不安定で転びやすくなるということがあります。 脳の中でアセチルコリン(記憶)とドーパミン(関節の滑らかな動き)はシーソーのようにバランスをとっているという考え方があります。ドネペジルのような中核症状改善薬によって...

 中核症状改善薬は、効き方のメカニズムから大きく2種類に分けられます。●コリンエステラーゼ阻害薬 ドネペジル・リバスタッチパッチ(イクセロンパッチ)・レミニール●NMDA受容体拮抗薬 メマリー●コリンエステラーゼ阻害薬で起こりうる副作用1)体の動きの悪化(錐体外路症状) 歩行など体の動きが鈍くなる。姿勢が傾く。 嚥下が悪くなる。2)意識レベルの悪化(脳幹網様体症状) 意識レベルが下がることでせん妄...

 PSP(進行性核上性麻痺)は、中脳・基底核から周囲にダメージが波及する神経難病で、無鉄砲な性格変化と眼球が上下に動きにくくなり、くり返す後方転倒が特徴的な疾患です。 神経難病などと言うと何やら専門的で素人が診断できる訳がない…と思われるかもしれませんが、できるだけ家族に「もしや…?」と気づいて頂きたい理由があります。 よくわからないけれど認知症だから…と安易にドネペジルなどの中核症状改善薬を開始...

 CBS(大脳皮質基底核変性症)は、大脳皮質・基底核から周囲にダメージが波及する神経難病で、片方の上下肢の不使用、半側空間無視などが特徴です。 神経難病などと言うと何やら専門的で素人が診断できる訳がない…と思われるかもしれませんが、できるだけ家族に「もしや…?」と気づいて頂きたい理由があります。 よくわからないけれど認知症だから…と安易にドネペジルなどの中核症状改善薬を開始してしまうと、急速に体の...

 神経内科医の中坂義邦先生(新横浜フォレストクリニック)が警鐘を鳴らされています。パーキンソン病の薬の副作用で「認知症みたいにされている」ケースが多いと。薬の副作用で精神症状が強く出て、認知症と診断されていると言うのです。 パーキンソン病は、中脳の黒質という部分の変性によってドーパミンという神経伝達物質が欠乏する原因不明の疾患です。振戦(手が震える) 固縮(関節の動きに滑らかさを欠く)無動(動作が...

認知症の中核症状改善薬の中で唯一の貼付剤(貼るタイプの薬)であるリバスタッチパッチ・イクセロンパッチ。内服薬でないことがプラスに働くこともあれば、逆にマイナスになることも。マイナスとなる一番の要因は、「貼った部位が赤くかぶれる」パッチでかぶれないための対策について書いてみます。(1)同じ場所に貼り続けない。貼る部位を変えていく。 同じ場所にずっと貼り続けていると、肌が刺激に負けやすくなるため、少し...